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生成AIと創造性:アイデアの固着と拡散的思考への影響に関する実験的研究

Entry

生成AIと創造性:アイデアの固着と拡散的思考への影響に関する実験的研究

Simple Title

Wadinambiarachchi, Samangi, Ryan M. Kelly, Saumya Pareek, Qiushi Zhou, and Eduardo Velloso. 2024. “The Effects of Generative AI on Design Fixation and Divergent Thinking.” arXiv [Cs.HC]. arXiv. http://arxiv.org/abs/2403.11164.

Description

生成AIをデザインの過程で使うと、AIのアウトプットに無意識に引っ張られてしまい、アイデアの多様性が奪われてしまう可能性がある

Type
Paper
Year

2024

Posted at
June 4, 2025 6:08 AM (GMT+9)
Tags
theorydesign
image

Overview

NotebookLMによるまとめ
  • 生成AIをデザインに用いると、ユーザはAIが出すアウトプットに執着、こだわってしまい、最終的なアウトプットの多様性が奪われてしまうことが定量的に示された
  • 生成AIを利用する場合にはこうした条件に意識的になる必要がある。

(以下、翻訳と要約にAIを利用しています)

Midjourney、DALL·E、Stable Diffusionなどの生成AI(GenAI)ツールの登場は、人間の創造性向上への期待を集めました。これらは簡単なプロンプトで高品質な視覚コンテンツを生成できるため、クリエイティブな課題解決の手段として注目されています。しかし、メルボルン大学の研究は、GenAIツールが創造的思考を妨げる可能性を指摘しています。

この研究では、AI生成画像がデザイン固着(創造的探求を制限する認知現象)に与える影響を60人の参加者で検証し、GenAIが拡散的思考に及ぼす負の影響を実証的に示しました。

Motivation

  • 生成AIがデザイナーの創造性を高めるというが本当なのか?
  • 生成AIを利用することで、Design Fixation=デザイン固定 (いい訳はないものか?)が生まれる可能性はないのか?
    • ここでいうDesign Fixationは、最初に与えられたサンプルや最初に出てきたアイデアに無意識に固着、執着し、その他のアイデアを無意識に切り捨ててしまう現象を指している。結果として、より広いデザイン空間の探求の現象、独創性/多様性の低下(解決策が似通う)につながってします
  • 生成AIが発散的な思考に与えうるネガティブなインパクトについて定量的に調べたい!

Method

  • タスク設計: 参加者60名全員に、「親切で、愛情深く、思いやりがあり、知性的な」と表現されるチャットボットのアバターのアイデアを20分以内にスケッチするよう求めた。
  • 意図的にデザイン固定(固着)を引き起こすため、各参加者には右のアバター例が提示された。
  • 参加者は次の三つのいずれかに分けられた
  1. ベースライン(サポートなし)
  2. 画像検索: 参加者はGoogle画像検索をインスピレーションとして使用
  3. GenAI: 参加者はDiscordを介してMidjourney v4を使用
実験参加者に見せたイラスト(実験参加者にはAntena, Earsといった項目は伏せて見せている)
実験参加者に見せたイラスト(実験参加者にはAntena, Earsといった項目は伏せて見せている)
  • それぞれのグループのアウトプットを以下のポイントで評価
  1. デザイン固定(固着)スコア(DFS): 初期例からコピーされた特徴の割合 (Antena, Earsと図の中にある項目のうち、コピーされた割合)
  2. Fluency 流暢性: 生成されたアイデアの総数 (単純にスケッチの数)
  3. Diversity 多様性: 一人の参加者が提案するアイデアの多様性 (人が目で見て評価)
  4. Originality 独創性: 他の参加者のアイデアと比較した独自性 (人が目で見て評価)

Results

参加者が書いた絵の例 左からサポートなし、画像検索を利用したグループ、生成AIを利用したグループ
参加者が書いた絵の例 左からサポートなし、画像検索を利用したグループ、生成AIを利用したグループ
  • 結果は以下の通り
    • 生成AIを使うことで、デザイン固定が進み、アイデアの多様性(一人の参加者の中でのアイデアの多様性)や独創性(参加者全体中での多様性)が減少。最初に与えたサンプルに似た、似たり寄ったりのアイデアが集まる結果となった。
デザイン固定(固着)スコア
デザイン固定(固着)スコア
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流暢性

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多様性

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独創性

  • 今後の生成AIの利用についての示唆
    1. 個々のデザイナー向け

    2. 生成AIがデザイン固着を生み出しかねないことを認識する
    3. AIの利用と伝統的なスケッチなどのバランスを意識してとる
    4. プロンプトの生成やAI出力の精査に時間をかけすぎて、直接的なアイデア出しに本当に生かされているか常に意識する
    5. ツール開発者向け

      この研究は、GenAIシステムを改善するための具体的な機会を特定しています。

    6. ユーザが特定のプロンプトにとらわれないように、意外性のあるプロンプトの組み合わせを提案する仕組みを作る
    7. あえてプロンプトを忠実に反映しない画像を生成することで多様性を持たせる 
    8. ユーザが特定のプロンプトにこだわった場合に警告したり、他のアイデアを追求するように促すなど行動に介入する
    9. AIの出力と課題そのものの抽象的な関係をユーザが特定するのを助ける仕組みを作る
    10. デザイン教育向け

    11. AIツールの持つ利点と限界の両方をきちんと伝え、トレーニングする
    12. デザインの固定概念へのバイアスを意識することは、AI時代においてさらに重要になる。こうしたバイアスを軽減するための議論と実践が必要になる。

Further Thoughts

論文を読んで考えた個人的感想

  • Design Fixationをどう訳すか、AIはデザイン固着と訳したがそれが本当にいい翻訳なのか。そんなところにもAIがもたらすDesign Fixationの影響がありそう。
  • 音楽、テキストなどでも同じような影響があるだろうか? = かなりありそう。
  • 多様なアウトプットを生むためのツールの開発は面白い実践になりそう。

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